教本まえがき

 

劇場では、さまざまな催し物が行われますが、劇場の技術者たちは主催者・実演家・観客が最大限に満足できるように、その催し物へ技術的支援を行います。そのためには、舞台進行・舞台音響・舞台照明に関する知識や技能の習得だけでなく、施設と設備機器の保守点検や修繕、人材の育成や法令遵守など、やるべきことが数多くあります。

劇場技術マネジメントとは、それらの統括管理をすることです。

 

ここで留意すべきは次のことです。

 

 目標達成のために、それぞれの技術者が果たすべき使命を認識させ、実行させる。

 「マネジメント」は「リーダーシップ」と混同されやすいのですが、リーダーシップは「方向性を示すこと」であるのに対し、マネジメントは「設定した目標に沿って運営すること」です。つまり、劇場技術マネジメントを行う管理者は、設定された劇場の目標達成のために、それぞれの技術者に対して使命を設定し、それが目標達成に必要であると十分に認識、実行させます。また、そのプロセスも管理して、技術者の状態を把握し、指導していくことも行ないます。このようにして、組織と個人が向かうべき方向とやるべきことをすり合わせて、目標を達成することがマネジメントなのです。

 

 劇場技術者が自ら想像力を発揮し、自己実現を図れるようにする。

 管理者は一方的に命令指導するのではなく、それぞれの技術者の能力や適性を考慮して、自ら物事を考え、状況に合わせて新しい発想や方法で業務に取り組めるように見守り、サポートしていくことが重要です。これにより、技術者は主体的に業務を行い、達成感や満足感を得られ、自己実現を体感するようになります。

 

 劇場技術者が果たすべき使命を達成することは、舞台業界だけでなく、広く社会への貢献につながっている。

 劇場で演じられる演劇や音楽の力は、文化的なことだけでなく精神衛生の向上にまで及んでいます。芸能制作に携わるスタッフは、実演家と共に地域住民に元気と勇気を与え、夢と希望を膨らませる役目を担っています。そのことは立派な社会貢献であり、これを誇りにして仕事にいそしむべきです。

 

GGM team:一般社団法人日本音響家協会/一般社団法人日本舞台監督協会]