教本書評

今城  正二

(イマシロ ショウジ)

 

本書を手にして、いつものように「まえがき」を読み、まずは驚きました。

これほど「まえがき」に、この教本の考え方の基本と目的が見事に表現され堂々と自信を持って読み手に何を伝えたいかを示されている書籍に、お目にかかったことがありませんでした。

 

参考までに、そのごく一部分を要約します。

 

『劇場では、さまざまな催し物が行われるが、劇場の技術者は今まで経験し積み重ねてきた卓越した技術力を発揮し、主催者、実演家、観客に最大限に満足できるよう技術支援を行う。そのためには各セクション担当の技術者に専門分野の知識だけでなく、機材の確かなる保守管理、人材育成、法令遵守などやるべきことが数多くある。技術マネジメントとは、それらを統括管理することである』と。

 

そして留意すべき大切な点を3つの項目に分類して、簡潔に見事に述べられています。

劇場技術マネジメントに携わる統括管理者は、すでに現場を知り尽くしたベテランの経験者であります。既に劇場管理者として従事されている方で、今後は常時運営されていく方々にとって、この教本は必ず役に立つものと確信します。

 

私は今回、時間をかけて3回にわたり全編をじっくりと繰り返し読ませていただきました。この繰り返しが、自分は何をこの教本に求めているのかが、はっきりしたことは確かです。

また末尾にしっかりとまとめられている索引がとても役立ちました。

筆者は「あとがき」で、この教本に対する思いを綴っておられます。

 

『劇場技術のそれぞれの専門家として成長し、最後は舞台技術全体をマネジメントすることになる。そのためには「誰のため、何のため」の劇場なのかを肝に銘じて仕事をすべきである』と述べられています。

 

最後に、教本出版サポートチームなど出版に携われた方々のお名前を拝見すると、それぞれ日本全国の劇場で現実に劇場技術マネジメントを実践されている一流の方々であることからも、この「劇場技術マネジメント教本」の内容の充実を伺い知ることができます。

この教本は経験を積んだ方々のために書かれていますが、これからやってみたいと夢を抱いている方々も含め、是非とも一冊をあなた自身の手元に、また職場にも、学校にも、公立図書館にも置かれることをお薦めします。